大判例

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東京高等裁判所 昭和31年(う)688号 判決

被告人 孟金発

〔抄 録〕

弁護人の控訴趣意(一)、について。

被告人に密出国の犯意があつたことは、原判決引用の証拠によりこれを認めるに十分である。すなわち原判決引用の証拠によれば、被告人は何等正規の手続を経ることなく、外国人(中国人)で乗員でないのに原判示日頃神戸港から英領香港に向け出港する外国貨物船太古号の船員、張某から黄色の葉書大のものを渡され、それを監視人に提示して乗船し、香港に向け出国したものであることを認めることができる。そして所論の原審証人郭竹修、同志村儀亥知の原審公判廷における各供述によれば被告人は右のように密出国する前に、友人郭竹修に出国手続を相談し、同人は更に友人志村儀亥知にその手続をとることを依頼しその承諾を得たが、志村儀亥知がその手続をしないうちに被告人は出国したものであることを認めることができるに過ぎず、被告人が所論のように出国前に適法な出国手続を経たものと信じて右貨物船太古号に乗船して出国した事実はこれを認めるべき証拠はない。しからば被告人に密出国の犯意がないとして原判決の事実誤認を主張する論旨は理由がない。

同(二)、について。

出入国管理令第二五条は、適法に本邦に在留し又は入国した外国人であると、不法に本邦に入国した外国人であるとを問わず総てその出国につき適用されるべきものと解するを相当とし、これを前者にのみ限定すべきいわれはない。蓋し同条に依り出国の証印を受くべき旅券とは必ずしも旅券そのものに限らず、これに代るべき証明書を含むことは、出入国管理令第二条の明らかに規定しているところであり、不法入国者であつても強制退去処分によらないで任意にその本国政府(外交使節)から旅券に代る証明書を得て、これに出国の証印を受けた上適法に出国することが可能であると解されるからである。しからば原判決が密入国者である被告人の原判示密出国に対し同令第二五条第七一条を適用しているのは正当であつて原判決には所論のように法令の適用を誤つた違法はない。所論は独自の見解であつて到底採用できない。それ故論旨は理由がない。

(近藤 吉田作 山岸)

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